京都芸術劇場春秋座 京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター

 春秋座オペラをふり返る

春秋座オペラ・プロデューサー 橘市郎

2010年

 春秋座オペラ、第1回目は團伊玖磨作曲の「夕鶴」でした。これは日本オペラ協会の京都公演といった感じで、東京で上演されたものの引越し公演ともいうべきものでした。ただ、元来歌舞伎劇場として建てられた春秋座にはぴったりの作品だったと思います。

それに春秋座最多出演を誇る川越塔子さんの京都初お目見えと言う記念すべき公演でもありました。注目すべきはこの時の演出がやはり最多演出の今井伸昭さんなのも不思議なご縁ですね。

2011年

 旧知の松山郁雄さんと私が意気投合して実現したプッチーニ作曲の「ラ・ボエーム」

演出の岩田達宗さんも指揮の牧村邦彦さんも我々の意図に賛同して下さり、春秋座独特のオペラを実現してくれました。花道を有効に使ったり主役は一流の歌手をということで、川越さんに加えテノールの村上敏明さんにも東京から参加してもらいました。

関西と関東の歌手がしのぎを削った刺激的な舞台だったと思います。

2011年「ラ・ボエーム」。オペラでありながら花道を有効に使った演出が話題に。春秋座ならではのオペラが誕生していくきっかけとなった作品。

2012年

尾上和彦さん作曲の「月の影」でしたが「源氏物語」を題材にした和製オペラは関西発のオリジナルオペラの可能性を追求するものでもありました。

演出を狂言師の茂山あきらさん、美術を京都造形芸術大学の大野木啓人さん、キャストの藤壺には小濱妙子さんなど異色の作品でした。

2013年

日本が舞台であるプッチーニ作曲の「蝶々夫人」でした。松山郁雄さんと話し合った末、指揮を牧村邦彦さんに、演出は関西の井原広樹さんにお願いしました。

この公演は笹岡隆甫さんの生け花を用いた美術や飛鳥珠王さんの衣装など異色のスタッフで話題を呼びました。ミラーを使ったシンプルなステージに展開される蝶々さんの悲劇は、見るものの涙を誘ったものでした。

蝶々さんの川越塔子さん、江口二美さんの他にピンカートンに大澤一彰さん、デビュー間もない笛田博昭さんも出演していたのが懐かしい思い出です。

2013年「蝶々夫人」。華道家・笠岡隆甫さんの生け花とミラーを用いた斬新な美術が話題を呼んだ。

2015年

2014年

ヴェルディ作曲の「椿姫」。このオペラは演出の三浦安浩さんの春秋座デビューでもありました。指揮はやはり新進の松下京介さんで、舞台美術はベテランの石井みつるさんが担当してくれました。回り舞台を使った転換やシンプルなスライドを生かした舞台が効果的でした。

ヴィオレッタ役のお二人は「蝶々夫人」と同じ川越塔子さんと江口二美さん。アルフレードには清原邦仁さんと松本薫平さん、そして注目すべきはジェルモンを片桐直樹さんと黒田博さんが競演してくれたことでした。お二人は京都出身で東京藝大に進まれた先輩、後輩で久し振りの再会だったのです。

春秋座オペラ初の喜劇で、登場人物が誰も死なないロッシーニ作曲の「セヴィリアの理髪師」でした。演出は今井伸昭さん、指揮は奥村哲也さんで、公演監督の松山郁雄さんはバルトロやアンプロージオという役を演じる出演者でもありました。アルマヴィーヴァ伯爵は竹内直紀さんと中川正崇さん。ロジーナは川越塔子さんと郷家暁子さん。フィガロ役は鶴川勝也さんと藤山仁志さんが務めました。オペラブッファは客席以上に稽古場に笑いが絶えず、楽しかったのが思い出されます。

2017年

2018年

モーツァルト作曲の「魔笛」。演出は三浦安浩さんが2年連続で担当。指揮は初登場の大勝秀也さんした。この作品は春秋座オープン当初、現・猿翁の演出で上演したいと思っていた作品ですが、三浦さんは独自の方法でまとめ上げてくれました。

ザラスト役は2日間とも片桐直樹さんで、ドラマの進行役も兼ねる重要な役を見事に演じてくれました。タミーノには二塚直紀さんと根木滋さん、パミーナは西田真由子さんと高嶋優羽さん、夜の女王に川越塔子さんと原田幸子さんなど多人数の優秀な出演者が参加してくれました。

プッチーニの「蝶々夫人」の再演ですが、初演の作品とは全く異なるもので、指揮は初登場の樋本英一さん、演出は春秋座3回目の今井伸昭さんでした。

蝶々さんは川越塔子さんと藤井泰子さんが演じ、ピンカートンはイタリア文化会館-大阪との共催のお陰でイタリアから来日してくれたピサピアさんとオーディションで選ばれた井藤航太さん。シャープレスは鶴川勝也さんと片桐直樹さん、スズキは岡村彬子さんと糀谷栄里子さんが演じてくれました。この作品のクライマックスは最後に蝶々さんが自害する場面ですが、その哀れさに涙が溢れて止まりませんでした。

この約10年間、各作品に工夫を重ねつつ、大勢の方の協力で春秋座オペラが実現できたことを感謝せずにはいられません。これからも皆様に支えられ、永く続いて行くことを心から願っています。        

2016年

第7回は最も上演されることが多いと言われるビゼー作曲の「カルメン」でした。この公演は指揮が牧村邦彦さん、演出が三浦安浩さんで、この年から京都造形芸術大学の学生さんが美術の柴田隆弘さん指導のもと、舞台製作をしてくれることになりました。斬新な舞台美術は春秋座の特徴をうまく生かしてくれたと思います。

カルメンは藤井泰子さんと並川寿美さんが演じてくれましたが、お二人とも

2016年「カルメン」。京都造形芸術大学の学生による斬新な美術が、舞台を華やかに彩った。

ソプラノなのが異色でした。ドン・ホセ役は新人の谷口耕平さんとベテランの角田和弘さん。エスカミーリョは折江忠道さんと鶴川勝也さんのダブルキャストでしたが、折江さんは藤原歌劇団総監督という多忙な立場ながら出演してくれたのが忘れられません。